ピロリ菌の除菌療法
H .ピロリ菌と胃十二指腸潰瘍、胃癌。および、その除菌療法についてピロリ菌除菌Q&A
- Q1.ピロリ菌除菌は、何の為に行うのですか?
- Q2.ピロリ菌除菌には、どんな薬を使うのですか?
- Q3.ピロリ菌の除菌の成功率は?
- Q4.初めての除菌で失敗しました、その時は?
- Q5.除菌薬に副作用は、ありますか?
- Q6.除菌後、再感染する危険は?
- Q7.何歳くらいから、除菌できますか?
- Q8.何歳までに、除菌したらよいですか?
- Q9.ピロリ菌によって起こる他の病気がありますか?
Q1.ピロリ菌除菌は何の為に行うのですか?
ピロリ菌に感染すると胃粘膜が傷つけられ、胃十二指腸潰瘍を発生したり、萎縮性胃炎をおこし胃癌を発生しやすくなります。
ピロリ菌を除菌すると胃癌の発症率が、約1/3以下になると報告され、ピロリ菌の除菌が胃癌への進行抑制効果をもつと推定されています。胃十二指腸潰瘍の再発を防ぎ、胃癌の発生リスクの軽減のため、ピロリ菌の除菌療法が推奨されているのです。
Q2.ピロリ菌除菌にどんな薬を使うのですか?
除菌専用薬(ランサップ、ランピオンパックなど)を朝と夕に二回、7日間飲むだけです。専用薬の中には、胃制酸剤PPIと抗生物質が含まれています。自宅で服用するだけで注射も入院も不用です。
Q3.ピロリ菌の除菌の成功率は?
除菌の成功率は、9割以上。三次除菌まで入れると99%以上です。
Q4.初めての除菌で失敗しました、その時は?
最初の除菌は、一次除菌薬のランサップを使用しますが、一部の方にランサップに耐性のピロリ菌を保有している方がいらっしゃいます。その方は、第二除菌薬のランピオンパックを使用します。それでもダメな方は、第三除菌薬(ニューキノロン使用)やヨーグルト併用除菌療法を行います。。その結果、一次除菌で85%、二次除菌で97%、三次除菌で99%以上の除菌が可能となりました。
Q5.除菌薬に副作用は、ありますか?
稀に下痢、味覚異常、発疹などがおきることがあります。しかし軽度なものがほとんどです。
一番、頻度が多いのは「下痢」です。軽度の下痢であれば継続して服用してください。ひどい下痢の場合は、下痢止めを併用して使用します。
その他、服用中に違和感がある場合は、来院または電話などで連絡して頂ければ対応いたします。
Q6.除菌後、再感染する危険は?
ピロリ菌が胃に感染するのは、幼児期の~5歳頃までで、除菌が成功した場合、再感染することはほとんどありません。
Q7.何歳くらいから、除菌できますか?
ピロリ菌学会では、一応20歳以上を目安としていますが、胃癌の抑制効果は感染から時間の経っていない胃炎の軽い人ほど大きいことから、15歳以上の方が適応と考えられます。
Q8.何歳までに、除菌したらよいですか?
40歳になるまでに除菌すれば、99%癌にならないと報告されています。年代が上がっていくにしたがって胃ガンの発生を抑制できる割合は悪くなりますが、どの年代でも除菌したほうが良いと考えられています。
Q9.ピロリ菌によって起こる他の病気がありますか?
その他の胃疾患では、胃過形成ポリープ、胃MALTリンパ腫、血液の病気では、ITP(特発性血小板減少性紫斑病)、皮膚疾患では、慢性じんま疹などです。
また、脳卒中や狭心症心筋梗塞の原因である動脈硬化は、肥満などの「メタボリック・シンドローム」が引き金とされています。しかし最近、ピロリ菌の慢性感染が動脈硬化の進行を速める事が指摘されています。
ピロリ菌最近の話題
ピロリ菌(Helicobacter pylori)には遺伝的にさまざまな株(ストレイン)があり、その中には胃がん発症リスクに大きな違いがあるものがあります。主に以下のような毒性遺伝子の有無や型によって分類され、それが胃がんのリスクと密接に関連しています。
ピロリ菌の主な病原性因子(がんリスクとの関連)
1. CagA(Cytotoxin-associated gene A)タンパク質
- 最も重要な発がん関連因子の一つ
- ピロリ菌が宿主細胞に注入する毒性タンパク質で、細胞内シグナル伝達を攪乱し、炎症や細胞の形態変化、さらにはがん化を引き起こす。
- CagA陽性株は胃がんリスクが高い。
- さらにCagAの**タイプ(東アジア型 vs 西洋型)**も重要:
- 東アジア型CagA(EPIYA-Dモチーフ):がんリスクが高い(日本、韓国、中国に多い)
- 西洋型CagA(EPIYA-Cモチーフ):がんリスクは東アジア型に比べて低い
2. VacA(Vacuolating cytotoxin A)タンパク質
- 細胞内に空胞を作り細胞傷害を引き起こす毒素
- VacAにも型の違いがあり、s1/m1型が特に毒性が強く、がんリスクが高いとされる
- s1/m1型:高リスク
- s2/m2型:低リスク
3. BabA(Blood group antigen-binding adhesin)
- 胃上皮への接着に関与
- BabA陽性株は粘膜に強固に付着し、炎症を起こしやすく、がんリスクを高めると考えられる
地理的な背景とリスクの違い
- 日本や韓国、中国などの東アジア地域では、CagA陽性かつ東アジア型CagAを持つ高リスク株が多く存在し、これがこの地域での胃がんの高発生率に関係していると考えられています。
- 欧米地域では、CagA陰性株や西洋型CagA株が多く、相対的に胃がん発症率は低い傾向にあります。
まとめ
ピロリ菌は単一の細菌種ではありますが、その毒性遺伝子の型や組み合わせによって胃がんリスクが大きく異なります。特に注目される分類は以下の通りです:
| 分類因子 | 高リスク型 | 低リスク型 |
|---|---|---|
| CagA | 陽性(東アジア型) | 陰性または西洋型 |
| VacA | s1/m1型 | s2/m2型 |
| BabA | 陽性 | 陰性 |
ピロリ菌除菌と胃がん予防
ピロリ菌の除菌は、胃がんの予防に有効とされています。特に、以下の点が強調されています:
- 除菌の適応:ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療を検討することが推奨されています。
- 除菌後のフォローアップ:除菌後も定期的な胃内視鏡検査が推奨されており、早期の胃がん発見に努めることが重要とされています。