甲状腺疾患の原因・症状・治療方法など

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

原因

甲状腺の機能を調節している甲状腺刺激ホルモン(TSH)というホルモンの情報の受け手であるTSHレセプターに対する抗体(TRAb)が血液中に出来ることが原因です。これが甲状腺を無制限に刺激するので、甲状腺ホルモンが過剰につくられて機能亢進症が起こります。このTRAbができる原因は、遺伝的素因が関係していると考えられています。

症状

甲状腺ホルモンが過剰になると全身の代謝が亢進するので、食欲が出てよく食べるのに体重が減り、暑がりになり、全身に汗をかくようになります。また動悸(どうき)、息切れを感じるようになります。手が震えて字が書きにくくなり、ひどくなると足や全身が震えるようになります。イライラして怒りっぽくなります。

検査

血液検査

甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで、診断できます。 さらにバセドウ病であることを確認するには、原因物質であるTSHレセプター抗体(TRAb)を測定します。

甲状腺エコー

甲状腺はびまん性に腫大し、内部エコーは不均一である。ドプラエコーにて実質内に豊富な血流信号を認めます。

治療

薬物治療、手術、アイソトープ治療の3種類があります。どれを選ぶかは、甲状腺の大きさや、ホルモンの分泌状態、年齢、妊娠の希望などを考慮して決定します。なお、抗甲状腺薬は妊娠中でも医師の指示のもとに服用することが出来ます。

  1. 抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)は甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。この薬で合成を抑えると、4週間くらいで甲状腺ホルモンが下がり始め、2カ月もすると正常になって、自覚症状はなくなります。しかし、原因のTRAbが消えるのは2~3年後なので、TRAbが陽性の間は抗甲状腺薬をのみ続ける必要があります。
  2. いつまでもTRAbが陰性にならない時は、甲状腺を一部残して切除する甲状腺亜全摘(あぜんてき)出術をする場合もあります。
  3. 放射性ヨードを投与して甲状腺を壊すアイソトープ治療です。これは一回カプセルを数錠飲むだけで、副作用も合併症も殆ど無い安全な治療法です。

放射線ヨード療法の適応(アイソトープ治療)

適用
  1. 薬で十分コントロールできないとき
  2. 薬で副作用が出たとき
  3. 甲状腺を小さくしたい時
  4. 薬の服用や、手術を希望しない方
  5. 19歳以上の方
禁忌
  1. 妊婦
  2. 授乳婦
  3. 近い将来(6ヶ月以内)妊娠する可能性のある方
特徴
  1. カプセルを服用するだけです
  2. 2日連続の通院で治療できます(一部入院治療が必要な場合もあります)
  3. 身体に負担がなく、持病があっても治療可能です
  4. 治療後、甲状腺機能低下症になる可能性があります

甲状腺機能低下症

原因

  1. 橋本病は、自己免疫障害によって甲状腺が攻撃され慢性炎症を起こして機能が低下する疾患で最も多くみられます。
  2. 脳腫瘍によって、 甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低下しているために甲状腺ホルモンを分泌できない場合や、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が低下しているためにTSH、甲状腺ホルモンとも分泌できない場合などがあります。

症状

全身の活動が低下し無力感を持ったり、体重増加、皮膚の乾燥、発汗減少、便秘、低体温などがみられます。 代謝が低下する事により皮下に粘液状の物質が沈着し浮腫むことがあり、これを粘液水腫と言います。活力の低下により精神活動も緩慢となり、うつ症状、偽痴呆を呈することもあります。

検査

血液検査で、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)を測定し その低下を認めることで診断が出来ます。また、TSH、TRHの反応から原因を鑑別します。

治療

甲状腺ホルモン(チラジンS)の投与が行なわれます。

ホルモンの投与量は、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定しながら、調合した量を長期に服用します。

慢性甲状腺炎(橋本病)

原因

自己免疫障害によって甲状腺が攻撃され慢性炎症を起こして機能異状を呈する疾患である。発症には遺伝的と環境因子が関係している。一般的には橋本病と同意語として用いられる。

症状および検査

甲状腺機能が完全に正常な状態、TSHが軽度上昇している潜在性甲状腺機能低下症、FT4も低下した顕在性甲状腺機能低下症、明らかな臨床症状をきたす状態まで様々である。 初期は、甲状腺機能が正常で、甲状腺腫大以外の症状に乏しい。病勢が進むにつれて徐々に甲状腺組織が破壊され、機能低下症に陥る。

血液検査で、甲状腺自己抗体の抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体が陽性になる。

治療

甲状腺機能が正常であれば、定期的に検査を行なって経過観察するのみでよいが、機能低下症に陥れば甲状腺ホルモン(チラジンS)の補充療法を行う。

亜急性甲状腺炎

原因

ウイルス感染による甲状腺の炎症で、原因ウイルスは未だ不明。

症状

炎症による前頚部痛と腫脹と発熱。甲状腺中毒症による、動悸.息切れ.全身倦怠感などが見られます。

検査

炎症が強いため、赤沈亢進し、CRP上昇。急性期には、甲状腺中毒症となるため、血清FT3,FT4高値、TSH低値。回復期には、血清FT3,FT4正常~低値。TSH高値。そのあと炎症が改善すると すべて正常化します。

治療

自然治癒する疾患であるので症状が自制範囲内であれば、無治療で経過観察する。炎症症状が強い場合は、NSAIDや副腎ステロイド剤が用いられる。

甲状腺腫瘍

分類

  1. 良性腫瘍:濾胞性腺腫、腺腫様甲状腺腫
  2. 悪性腫瘍:乳頭癌、濾胞癌、未分化癌、悪性リンパ腫などがある。

検査

甲状腺エコーにて診断され、細胞診で良悪性の判断を行う。

甲状腺エコー甲状腺エコー

甲状腺シンチ甲状腺シンチ

深見医院

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